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求人票を書く時間がない。スカウトを送りたいが、一人ひとりに合わせた文面を考える余裕がない。採用担当が総務や工場の管理業務と兼任の会社では、「書く仕事」が採用活動のいちばんの詰まりどころになりがちです。
そこで頼りになるのが、文章の下書きが得意な生成AIです。総務省の令和8年版情報通信白書によると、何らかの業務で生成AIを利用している日本企業は8割を超えました。一方で、採用の現場では「何をどこまで任せてよいのか分からない」「応募者の情報を入力して大丈夫なのか」という不安から、使い始められていない会社も少なくありません。
この記事では、求人票とスカウト文を生成AIで作る具体的な手順を指示文の例つきで紹介し、あわせて採用ならではの注意点を整理します。製造業の例を多く使いますが、考え方は業種を問わず使えます。
生成AIが採用業務で役に立つ場面
生成AIが得意なのは、材料をもとに文章の形を整えることです。採用業務では次のような場面で力を発揮します。
- 現場から聞き取ったメモを、求人票の文章に整える
- 同じ求人を、求人サイト用・自社サイト用・SNS用に書き分ける
- スカウト文のたたき台を、職種や経験に合わせて複数案つくる
- 面接の質問案や、評価項目のたたき台をつくる
- 書いた文章を読みやすく直す、専門用語をかみくだく
反対に苦手なのは、自社の事実を知ることです。生成AIは、あなたの工場の勤務時間も、現場の雰囲気も、任せたい仕事の中身も知りません。材料を渡さずに「求人票を書いて」と頼むと、どの会社にも当てはまる、きれいだが中身のない文章が返ってきます。生成AIは「書く人」ではなく「清書を手伝う人」と考えるとうまくいきます。
使い始める前に決めておく3つのルール
ルール1:応募者の個人情報を入力しない
履歴書や職務経歴書、面接のメモには個人情報が含まれます。個人情報保護委員会は、生成AIサービスに個人情報を含む内容を入力する場合は、利用目的の範囲内であるかを十分に確認すること、入力した情報がAIの学習に使われないかを確認することを事業者に呼びかけています。
中小企業でいちばん安全で分かりやすい運用は、「氏名・連絡先・学校名・勤務先名など、個人が特定できる情報は入力しない」と決めてしまうことです。スカウト文を作るときも、相手の経歴をそのまま貼り付けるのではなく、「金属加工の経験が約5年、品質管理の経験あり」のように要点だけを自分の言葉で渡します。会社として契約している生成AIサービスがある場合は、入力した内容の扱いを利用規約と設定で確認しておきましょう。
ルール2:事実は必ず人が確認する
生成AIは、もっともらしい文章を作る過程で、渡していない情報を補ってしまうことがあります。「年間休日120日」「資格取得支援あり」など、実際には無い条件が紛れ込むと、求人票としては致命的です。
職業安定法では、求人広告などで募集情報を出すときに、虚偽の表示や誤解を生じさせる表示をしてはならず、内容を正確かつ最新に保つことが求められています。賃金、勤務時間、休日、就業場所、業務内容といった労働条件は、AIに考えさせる項目ではありません。社内の正しい数字を人が入力し、出来上がった文章を人が照合する。この手順は省略できません。
ルール3:合否の判断をAIに任せない
応募書類をAIに読ませて合否を決めさせる使い方は、個人情報の面でも、公正な採用選考の面でも勧められません。AIの出力には、学習したデータの偏りが反映されることがあります。総務省と経済産業省の「AI事業者ガイドライン」も、AIを利用する事業者に対して、人間の判断を介在させることや、不当な偏りに配慮することを求めています。採用の合否は人の人生を左右する判断です。AIは文章づくりと準備の手伝いまで、判断は人が行う、と線を引いておきましょう。
求人票を生成AIで作る4つの手順
手順1:現場から材料を集める
最初にやるのはAIを開くことではなく、現場の話を聞くことです。配属先の班長や先輩社員に15分ほど時間をもらい、次の点をメモします。箇条書きで十分です。
- 一日の流れ(出社から退社まで、何をどの順番でするか)
- 使う機械や道具、扱う製品
- 入社して最初の3か月で覚えること、1年後に任せたいこと
- この仕事の大変なところと、続けている人が感じているやりがい
- 職場の人数、年齢層、教える担当が付くかどうか
この材料の質が、そのまま求人票の質になります。
手順2:材料と条件を渡して下書きを頼む
集めたメモを、読み手と目的を添えて生成AIに渡します。指示文は次のような形です。
あなたは中小製造業の採用担当です。以下のメモをもとに、求人サイトに載せる「仕事内容」の文章を400字程度で書いてください。読み手は工場で働いた経験のない20代です。専門用語にはかんたんな説明を添えてください。メモに書かれていない条件や数字は絶対に追加しないでください。不足している情報があれば、文章のあとに質問として挙げてください。
(ここに現場のメモを貼る)
ポイントは、読み手を具体的に伝えること、文字数を指定すること、そして「メモに無いことは書かない」「足りない情報は質問して」と頼むことです。最後の一文を入れておくと、AIが勝手に条件を補うのを防げるうえ、求人票に足りない情報にも気づけます。
手順3:事実と法令上の表示を確認する
下書きができたら、賃金・勤務時間・休日・就業場所・業務内容・試用期間などの労働条件を、社内の正しい情報と一つずつ照合します。2024年4月からは、募集時に明示する労働条件として、業務内容や就業場所の「変更の範囲」なども加わっています。こうした項目はAIの下書きには出てこないことが多いので、人が書き足します。
あわせて、性別や年齢を限定するような表現、実態より良く見せる表現が紛れ込んでいないかも確認します。「若手が活躍中」「アットホームな職場」のような、どの求人にもある言い回しは、この段階で具体的な事実に置き換えましょう。
手順4:読み手の目で直してもらう
最後に、もう一度AIを使います。「この求人票を、工場で働いたことのない20代が読んだとき、分かりにくい点や不安に感じそうな点を5つ挙げてください」と頼むと、書き手が気づきにくい穴が見つかります。夜勤の頻度が書かれていない、未経験者への教育が分からない、といった指摘が返ってきたら、現場に確認して書き足します。仕上げに、配属先の社員に読んでもらい、実態と違うところがないかを確かめれば完成です。
スカウト文を生成AIで作る手順
スカウト文で避けたいのは、誰にでも当てはまる定型文の一斉送信です。受け取る側はすぐに見抜きますし、生成AIで量だけ増やしても返信は増えません。AIは「一人ひとりに合わせる手間」を減らすために使います。
型を先に作る
まず、職種ごとにスカウト文の骨組みを人が決めます。おすすめは、①相手の経歴のどこに目が留まったか、②その経験を自社のどの仕事で活かせるか、③自社で働く魅力を一つだけ、④まずは気軽な面談や工場見学から、という4つの流れです。
要点だけを渡して文面にする
次に、候補者の経歴から読み取った要点を、個人が特定できない形で渡します。
以下の骨組みと情報をもとに、スカウト文を300字程度で書いてください。丁寧だが堅すぎない文体で、誇張した表現は使わないでください。
相手の要点:金属加工の経験が約5年。直近は品質管理も担当。
任せたい仕事:精密部品の加工と、検査工程の改善。
自社の魅力:少人数の工場で、加工から検査まで一貫して関われる。
次の一歩:平日夕方の工場見学、またはオンラインでの30分の面談。
出来上がった文面は、必ず人が読み、相手の経歴と食い違っていないか、自社が約束できないことを書いていないかを確認します。冒頭の一文だけは自分の言葉で書き直すと、定型文らしさが消えて印象が大きく変わります。
結果を見て型を直す
送った数と返信の数を、職種や文面の型ごとに記録しておきます。返信が少ない型は、件名、冒頭、次の一歩のどこに原因がありそうかをAIに相談しながら見直します。続けるほど、自社に合った型が育っていきます。
生成AIに任せてはいけないこと
ここまでの内容を、任せてよいことと人がやるべきことに整理します。
| 生成AIに任せてよいこと | 人がやるべきこと |
|---|---|
| メモから文章の下書きを作る | 現場への聞き取り、材料集め |
| 媒体ごとの書き分け、言い換え | 労働条件の入力と照合 |
| 読みにくい点、不足している点の指摘 | 法令上の表示、差別的な表現の確認 |
| スカウト文や面接質問のたたき台 | 候補者の評価、合否の判断 |
| 送信結果の振り返りの相談相手 | 応募者とのやり取り、関係づくり |
面接の質問案をAIに作らせる場合も注意が必要です。家族のこと、出身地、思想や信条など、本人の適性と能力に関係のない質問が混ざっていないか、厚生労働省が示す公正な採用選考の考え方に照らして人が確認してください。
兼任の採用担当でも続けられる運用のコツ
生成AIの活用は、一度試して終わりにすると効果が出ません。無理なく続けるために、次の3点をおすすめします。
- うまくいった指示文を保存する:求人票用、スカウト用、書き直し用の指示文を社内の共有フォルダに残しておけば、担当が変わっても同じ品質で作れます
- 社内ルールを1枚にまとめる:入力してはいけない情報、確認する人、使ってよいサービスを紙1枚に書いておきます。詳細な規程より、全員が守れる短いルールが大切です
- 浮いた時間の使い道を決める:書く時間が減った分を、現場への聞き取り、応募者への素早い返信、工場見学の受け入れに回します。採用の成果を左右するのは、結局のところ人と人の接点です
生成AIを使う目的は、文章を大量に作ることではなく、採用担当が人にしかできない仕事に時間を使えるようにすることです。
まとめ
生成AIは、求人票やスカウト文の「書く手間」を大きく減らしてくれます。ただし、自社の事実を知っているのは人だけです。現場から材料を集め、材料と条件を渡して下書きを作り、労働条件と表示を人が確認し、読み手の目で直す。この流れを守れば、採用担当が兼任の会社でも、具体的で誠実な求人票を短い時間で作れるようになります。
始める前に、応募者の個人情報を入力しない、事実は人が確認する、合否の判断は任せない、という3つのルールを決めておきましょう。それでも採用業務全体に手が回らない場合は、求人票づくりからスカウト、応募者対応までの仕組みづくりを、RPaaS のような採用代行に任せるのも一つの選択肢です。まずは次に出す求人票の1本から、試してみてください。
よくある質問
生成AIで作った求人票をそのまま掲載しても問題ありませんか?
そのまま掲載するのは避けてください。生成AIは渡していない条件をもっともらしく補うことがあり、実際と違う休日数や手当が紛れ込むおそれがあります。求人情報は虚偽や誤解を生む表示をせず、正確かつ最新に保つことが求められます。賃金・勤務時間・就業場所などは必ず人が社内の情報と照合してから掲載しましょう。
応募者の履歴書を生成AIに読み込ませてもよいですか?
おすすめしません。履歴書には氏名や連絡先などの個人情報が含まれ、利用目的の範囲内か、入力内容がAIの学習に使われないかといった確認が必要になります。中小企業では、個人が特定できる情報は入力しないと決めるのが安全です。経歴の要点だけを自分の言葉でまとめて渡せば、スカウト文の作成には十分です。
生成AIで作ったスカウト文は相手に見抜かれませんか?
誰にでも当てはまる文面を大量に送れば、AIを使っていなくても見抜かれます。大切なのは、相手の経歴のどこに注目したか、自社のどの仕事で活かせるかが具体的に書かれていることです。骨組みは人が決め、AIには文面への整形を任せ、冒頭の一文は自分の言葉で書き直すと、定型文らしさはほとんど消えます。
無料の生成AIサービスを採用業務に使っても大丈夫ですか?
個人情報や社外秘の情報を入力しない範囲であれば、求人票の下書きなどに使うことはできます。ただし、サービスによっては入力内容がAIの学習に利用される設定になっている場合があります。利用規約と設定を確認し、会社として使ってよいサービスと入力してはいけない情報を、短い社内ルールとして決めておくと安心です。
採用の合否判断に生成AIを使ってもよいですか?
合否の判断をAIに任せることは勧められません。AIの出力には学習データの偏りが反映されることがあり、公正な採用選考の観点からも、判断には人が責任を持つ必要があります。AIは求人票やスカウト文の下書き、面接の質問案のたたき台づくりなど準備の手伝いまでにとどめ、評価と合否は面接官が基準に沿って行いましょう。