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「求人を出しても、応募してくるのは50代以上ばかり」「せっかく入った20代が1年もたずに辞めてしまう」。地方の工場の経営者や工場長から、よく聞く悩みです。ベテランが元気なうちに次の世代を育てたいのに、肝心の若手が入ってこない。この状態が続くと、技能の継承も設備の更新も先送りになってしまいます。
ただ、「地方には若者がいないから仕方がない」と片づけてしまうのは早すぎます。統計を見ると、若者は確かに大都市へ移っていますが、地元で働きたいと考える学生も少なくありません。問題は、地方の工場が若手から見える場所にいないことと、若手が知りたい情報を出せていないことにあります。この記事では、地方工場の若手採用が難しい理由を整理したうえで、狙う層の分け方と、中小工場でも取り組める7つの打ち手、入社後の定着までを順に解説します。
地方工場で若手が採れないのは「若者がいない」からか
若者は20代前半で大都市圏へ移っている
総務省の住民基本台帳人口移動報告(2025年)によると、日本人の移動で東京圏(東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県)は11万2,738人の転入超過となり、30年連続で転入が転出を上回りました。年齢別では20〜24歳が8万443人と最も多く、次いで25〜29歳(2万3,546人)、15〜19歳(2万1,469人)です。東京圏の20〜24歳は、すべての道府県に対して転入超過となっています。進学や就職のタイミングで、地方から大都市へ若者が移る流れは今も続いています。
それでも地元で働きたい学生は約6割いる
一方で、マイナビの「2027年卒大学生Uターン・地元就職に関する調査」では、地元(Uターンを含む)での就職を希望する学生は58.7%で、前年より2.3ポイント増え、4年ぶりに増加しました。地元以外の大学に進学した学生でも、現時点で地元就職を希望する層が49.3%、将来的に地元で働きたい層が6.4%います。若者全体が地方を避けているわけではなく、「地元に帰りたいが、帰れる働き口が見つからない」若者も一定数いると考えられます。
中小工場は若手との接点そのものが少ない
厚生労働省の令和5年若年者雇用実態調査では、過去1年間に若年労働者(15〜34歳)を正社員として採用した事業所は、製造業で36.8%でした。事業所規模が小さいほどこの割合は下がり、5〜29人規模では全産業で27.9%にとどまります。若手を採用していない会社には、若手社員がいない、若手向けの発信がない、という状態が重なりやすく、求職者の目に入る機会がさらに減っていきます。
地方工場の若手採用がうまくいかない4つの原因
1. 求人が若手の知りたいことに答えていない
地方工場の求人票は、仕事内容が「製造業務全般」「機械オペレーター」の一言で終わっていることが多くあります。経験者や地元の年配の方なら想像がつきますが、工場で働いたことのない20代には、1日の流れも、どんな力が身につくのかも分かりません。分からない求人は、比べる候補にすら入りません。
2. 求人の経路がハローワークと縁故だけになっている
ハローワークは地方の採用で今も大切な経路です。ただ、大学生や都市部で働く20代は、まず求人サイトや企業のホームページ、SNSで仕事を探します。地元の同級生や家族からの紹介も含めて、経路を1つに頼っていると、Uターンを考えている層には情報が届きません。
3. 給与と休日の見せ方で損をしている
同じ若年者雇用実態調査で、転職したいと考えている若年正社員にその理由を聞くと、「賃金の条件がよい会社にかわりたい」が59.9%、「労働時間・休日・休暇の条件がよい会社にかわりたい」が50.0%と上位を占めました。マイナビの調査でも、地元就職を希望しない学生が地元就職を考える条件として、「給料がよい就職先が多くできる」が42.9%と最も多く挙がっています。地方は生活費が抑えられる分、手取りで見れば都市部と遜色ない場合もあります。それでも、基本給だけを載せていたり、休日数を書いていなかったりすると、都市部の求人と並べたときに見劣りします。
4. 入社後の育て方が見えない
若手は「この会社で何年かけて、何ができるようになるか」を気にします。教える人が決まっていない、資格取得の支援がない、何年目にどんな仕事を任されるかが分からない。そうした会社は、未経験の若手にとって不安が大きく、応募をためらう理由になります。
まず狙う若手を3つに分ける
「若手」とひとまとめにせず、どの層を狙うのかを先に決めると、求人の書き方も届け方も具体的になります。地方工場で狙いやすいのは、次の3つの層です。
| 狙う層 | 特徴 | 主な接点 |
|---|---|---|
| 地元の新卒(高校・高専・大学) | 地元で働く意思がはっきりしている。入社時期がそろうので育成計画を立てやすい | 学校訪問、職場見学、インターンシップ、学校経由の求人 |
| 地元にいる20代(第二新卒・非正規雇用) | すぐ働ける。前職で合わなかった理由がはっきりしていることが多い | ハローワーク、求人サイト、社員や取引先からの紹介 |
| Uターン・Iターン希望の20〜30代 | 都市部での職務経験がある。家族の事情や暮らし方を重視して地方を選ぶ | 求人サイト、自治体の移住相談、オンライン面談、帰省時期の見学会 |
地元にいる20代のうち、パートや派遣などで働いている人も見落とせません。若年者雇用実態調査では、正社員以外で働く若年労働者のうち「正社員として働きたい」人は35.7%、男性に限ると44.0%でした。工場は未経験から正社員を目指せる職場の代表です。「未経験から正社員」「現場から育てる」と明記するだけで、この層に届きやすくなります。
地方工場が若手を採るための7つの打ち手
1. 給与は「総額」と「上がり方」で見せる
基本給だけでなく、各種手当や賞与を含めた年収の目安を書きます。あわせて、入社3年目、5年目のモデル年収や、資格を取ったときの手当など、上がり方を示します。家賃補助や社宅があるなら、都市部の家賃と比べて手元にいくら残るかを書くのも効果的です。若手は今の金額だけでなく、この先の見通しで会社を比べています。
2. 休日とシフトを最初に書く
年間休日、週休の形(土日休みか、シフト制か)、残業の月平均、夜勤の有無を、求人の上の方にまとめて書きます。交替勤務がある場合も、何日働いて何日休むのか、1か月のシフト例を載せると、生活のイメージがつかめます。ここがあいまいだと、若手は「書けないくらい厳しいのでは」と受け取ります。
3. 入社後1年の育て方を具体的にする
最初の1か月は誰について何を覚えるのか、3か月後、1年後に何ができるようになっていればよいのかを、簡単な表にして求人や面接で見せます。教育係を決める、フォークリフトや玉掛けなど仕事に必要な資格の取得を会社が支援する、といった仕組みがあれば、それも書きます。未経験の若手にとって、育て方が見えることは給与と同じくらい大きな安心材料です。
4. Uターン層が動く時期に合わせて届ける
お盆や年末年始は、地元を離れた若者が帰省し、家族と仕事の話をする時期です。この時期に合わせて工場見学会を開く、求人サイトへの掲載を強める、オンライン面談の枠を用意するなど、相手の動きに合わせて接点を作ります。Uターン層は家族の意見を重視することが多いため、保護者が見ても分かる会社案内を用意しておくと、家族の後押しにつながります。
5. 学校と地域との接点を早めに作る
マイナビの調査では、将来的に地元で働きたいと考える層の71.7%が、高校生までに地元企業について知る機会があったと答えています。中学・高校の職場体験や地元の企業説明会、高専や工業高校との関係づくりは、すぐに応募につながるものではありません。それでも数年後、地元に戻る選択肢を考えたときに、会社の名前を思い出してもらえるかどうかを左右します。
6. 同世代の社員に語ってもらう
若手は、社長の言葉よりも、年の近い先輩の話を信じます。入社2〜3年目の社員に、入社した理由、1日の流れ、休日の過ごし方、大変だったことを話してもらい、求人ページや会社のSNSに載せます。見学会や面接にも同席してもらうと、応募者は入社後の自分を具体的に思い描けます。若手社員がまだいない場合は、30代の中堅社員でもかまいません。
7. 若手が辞めにくい職場であることを客観的に示す
厚生労働省のユースエール認定制度は、若者の採用・育成に積極的で、雇用管理の状況が優良な中小企業(常時雇用する労働者が300人以下)を認定する制度です。主な基準は、直近3事業年度に新卒などで正社員として就職した人の離職率が20%以下、正社員の月平均所定外労働時間が20時間以下、有給休暇の取得率が平均70%以上または年間取得日数が平均10日以上、などです。認定を受けると、ハローワークで重点的に紹介されるほか、認定マークを求人や会社案内に使えます。基準を満たしていれば、自社の働きやすさを第三者の目で示す材料になります。
採った若手を辞めさせない
採用できても、すぐに辞めてしまっては元に戻ります。若年者雇用実態調査では、過去1年間に自己都合で退職した若年労働者がいた事業所は、製造業で43.5%でした。若年正社員の31.2%は今後の転職を考えており、20〜24歳では35.0%にのぼります。
定着のために実施している対策では、「職場での意思疎通の向上」が最も多く挙がっています。地方工場で取り組みやすいのは、次のようなことです。
- 入社から3か月は、教育係と週1回、短い面談の時間を取る
- 困ったときに相談できる相手を、直属の上司以外にも1人決めておく
- できるようになった作業を一覧にして、本人と一緒に確認する
- 入社前に聞いていた話と違うことがあれば、早めに説明する
特に、面接で伝えた内容と入社後の実態に差があると、若手は早いうちに見切りをつけます。求人と面接の段階で、大変な面も含めて正直に伝えておくことが、結局はいちばんの定着策になります。
採用担当が兼任の工場で回すには
地方の中小工場では、総務や工場長が採用を兼任していることがほとんどです。7つの打ち手をすべて一度に始める必要はありません。まずは求人票の給与・休日・育成の書き方を直す(打ち手1〜3)ところから始め、次に帰省時期に合わせた見学会(打ち手4)と若手社員の声(打ち手6)を加える、という順番がおすすめです。
どの経路から何人応募があり、何人が見学に来て、何人が入社したかを月に1回だけでも記録しておくと、翌年に力を入れる場所が分かります。求人の作り直しや応募者への連絡、面接日程の調整に手が回らない場合は、その部分だけ外部に任せるのも一つの方法です。
まとめ
地方の工場で若手が採れないのは、若者がいないからだけではありません。若者は20代前半で大都市へ移る一方、地元で働きたいと考える学生は約6割います。地方工場が若手を採るには、狙う層を地元の新卒、地元にいる20代、Uターン層に分けたうえで、給与の総額と上がり方、休日とシフト、入社後1年の育て方を分かりやすく示し、若手が動く時期と場所に合わせて接点を作ることが大切です。そして、採った若手が辞めないよう、入社後の対話の仕組みを用意しておきます。
採用業務の設計から求人づくり、応募者対応までをまとめて任せたい場合は、RPaaS のような採用代行を検討する選択肢もあります。自社で続ける部分と任せる部分を分けて、若手が入り続ける工場をつくっていきましょう。
よくある質問
地方の工場で若手が採用できないのはなぜですか?
若者が20代前半で大都市へ移る流れがあることに加え、求人が若手の知りたい情報に答えていないこと、求人の経路がハローワークと縁故に偏っていること、給与や休日の見せ方で都市部の求人に見劣りすること、入社後の育て方が見えないことが重なっているためです。地元で働きたい学生は約6割いるため、届け方と見せ方を変える余地は大きくあります。
地方工場の若手採用では、どの層を狙えばよいですか?
地元の新卒(高校・高専・大学)、地元にいる20代(第二新卒やパート・派遣などで働く人)、Uターン・Iターンを希望する20〜30代の3つに分けて考えるのがおすすめです。層ごとに知りたい情報と接点が違うため、どの層を優先するかを決めてから求人の書き方や見学会の時期を決めると、少ない手間で効果が出やすくなります。
若手向けの工場の求人票で、特に書くべきことは何ですか?
手当や賞与を含めた年収の目安と入社後の上がり方、年間休日とシフトの形、残業や夜勤の実態、入社後1年でどこまで育てるかの3点です。若手は今の条件だけでなく、この先の見通しで会社を比べます。工場で働いた経験のない人でも1日の流れが想像できるよう、具体的に書くことが大切です。
Uターン希望者に求人を届けるにはどうすればよいですか?
お盆や年末年始の帰省時期に合わせて工場見学会を開く、求人サイトへの掲載を強める、オンライン面談の枠を用意するなど、相手が動く時期に接点を作ります。Uターンは家族の意見が大きく影響するため、保護者が見ても分かる会社案内や、地元での暮らしと手取りが分かる情報を用意しておくと効果的です。
採用した若手社員が早く辞めないためには何が必要ですか?
入社から3か月は教育係と週1回の短い面談を設ける、上司以外の相談相手を決める、できるようになった作業を本人と確認するなど、職場での対話を増やす仕組みが有効です。また、面接で大変な面も正直に伝えておくと、入社後のギャップによる早期離職を防げます。