目次
1. 「ハネムーン期」の終わりと危機の訪れ
入社直後の「ハネムーン期(Welcomeムード)」は、通常1ヶ月程度で終了します。 この時期、新入社員は「教えてもらう立場(Receiver)」から「価値を提供する立場(Giver)」への転換を迫られます。 しかし、即戦力として期待される中途採用者ほど、「成果を出さなければ」という焦りと、「まだ社内ルールも把握できていない」という現状のギャップに苦しみ、自己効力感が著しく低下する「1ヶ月の壁」に直面します。
2. 「お客様(Guest)」から「当事者(Owner)」へ
オンボーディングの最大の目的は、マインドセットを「お客様」から「当事者」へとシフトさせることです。 このシフトがうまくいかないと、新入社員は「会社が何もしてくれない」という不満を持つ「批評家(Critic)」へと変貌し、組織にとってネガティブな存在になりかねません。
3. マインドセット転換のための3つの支援
① アンラーニング(Unlearning)の促進:
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過去の成功体験やプライドが、新しい環境への適応を阻害することがあります(過剰な同化)。
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上司や人事は、「過去のスキルはいったん横に置き、この会社の流儀(OS)をインストールする時期だ」と伝え、「できない自分」を認める心理的安全性を提供する必要があります。
② ヘルプ・シーキング(Help Seeking)の習慣化:
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「質問したら評価が下がるのではないか」という恐れを取り除きます。
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「最初の1ヶ月は『質問すること』が仕事です。1日5回は質問してください」と具体的な行動目標を設定し、助けを求めることは弱さではなく「チームワークのスキル」であると再定義します。
③ クイック・ウィン(Quick Win)の創出:
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どんなに小さなことでも良いので、「自分がチームの役に立った」という成功体験(Quick Win)を作ります。
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例: 議事録の作成、共有フォルダの整理、朝会での元気な挨拶など。
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これらを上司が意図的に評価することで、「自分はこの組織に必要な存在だ(所属意識)」という感覚(当事者意識)が芽生えます。
4. 1ヶ月目のチェックポイント
入社1ヶ月後の面談では、業務の進捗以上に以下の点を確認してください。
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名前で呼び合える同僚ができたか?
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「分からないこと」を誰に聞けばいいか把握しているか?
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会社の悪い点(課題)が見えた時、それを「他人のせい」にせず「自分ならどうするか」と考え始めているか?
Summary
「お客様」扱いを続けることは優しさではありません。 適度な負荷と責任を与え、転んでもすぐに手を差し伸べる距離感で見守ること。それが、自立した「当事者」を育てる唯一の道です。
Next Step:
入社1ヶ月を迎える社員に対し、「1ヶ月振り返りMTG」を設定してください。その際、「何ができたか(成果)」だけでなく、「何に困っているか(弱音)」を吐き出させ、「それは誰もが通る道だ」と承認してあげましょう。