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「工場の求人を出しても、応募してくるのは男性ばかり」「女性にも来てほしいが、何から変えればよいか分からない」。人手不足が続くなかで、女性の採用に目を向ける工場が増えています。一方で、求人票に「女性歓迎」と書いたら法令上の問題を指摘された、採用した女性がすぐ辞めてしまった、という話も少なくありません。
工場の女性採用は、求人の書き方を変えるだけではうまくいきません。応募が来ない理由の多くは、求人票の外にある作業内容や設備、働き方にあります。この記事では、工場で女性の応募が来ない理由を調査データから整理したうえで、求人で守るべきルール、職場の見直し方、2026年4月に施行された改正女性活躍推進法への対応まで、中小工場の進め方を順に解説します。
製造業の女性採用の現状をデータで見る
製造業は女性管理職が少ない産業の一つ
厚生労働省の令和6年度雇用均等基本調査によると、正社員に占める女性の割合は全産業で27.6%でした。課長相当職以上の管理職に占める女性の割合は全産業で13.1%ですが、製造業は7.6%と、全産業の平均を大きく下回っています。女性が管理職として働く姿が社内に少ないことは、応募を考える女性にとって「長く働ける職場か」を判断しにくい材料になります。
「男性のみ採用」の理由は「女性の応募がなかった」が7割
同じ調査で、新卒採用で男性のみを採用した区分があった企業にその理由を聞くと、「女性の応募がなかった」が71.2%と最も多く、令和2年度の62.8%から上昇しました。「女性の応募はあったが、採用前に辞退された」も13.2%あります。会社側が女性を避けているというより、そもそも女性の候補者と出会えていない、出会えても選ばれていない状態が多いことが分かります。
工場で女性の応募が来ない4つの理由
1. 力仕事・きつい仕事というイメージが強い
工場で働いたことのない人にとって、製造の仕事は「重い物を運ぶ」「暑くて汚れる」というイメージで止まっています。実際には、検査、組立、機械の操作や監視など、体力よりも正確さや丁寧さが求められる工程も多くあります。ところが求人票に「製造業務全般」としか書かれていないと、こうした仕事の中身は伝わりません。
2. 女性が働く前提の設備がない
女性用の更衣室やトイレがない、休憩室が一つで男性ばかり、作業服や安全靴に小さいサイズがない。職場見学に来た女性がこうした点に気づくと、その場で辞退を決めることがあります。採用前の辞退が一定数ある背景には、設備の問題も含まれていると考えられます。
3. 働き方の選択肢が少ない
フルタイムの交替勤務しか選べない、急な残業が多い、子どもの急な発熱で休みにくい。家庭の事情を抱える人ほど、働き方の柔軟さで職場を選びます。短時間勤務や日勤のみの枠がない工場は、それだけで候補から外れやすくなります。
4. 入社後の姿が見えない
女性の先輩がいない、女性のリーダーや管理職がいない職場では、応募者は自分が数年後にどう働いているかを想像できません。製造業で女性管理職の割合が低いことは、こうした「先が見えない」不安にもつながっています。
求人票で守るべきルール
女性に来てほしいという思いが強いほど、求人票の書き方には注意が必要です。男女雇用機会均等法では、募集・採用で性別を理由とした差別を禁止しています。
- 性別を限定・優先する表示はできない:「女性限定」「女性歓迎」「主婦歓迎」のように、一方の性別を対象にしたり優先したりする表示は原則として認められません。「女性向きの仕事」「男性向きの仕事」といった書き方も同様です
- 例外はポジティブ・アクション:その職種や役職で女性が相当程度少ない場合(目安は4割を下回る場合)、女性の応募を積極的に呼びかけるなど、格差を解消するための措置は認められています。表示の仕方に迷ったら、事前に都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)に確認すると安心です
- 条件で伝える:性別を書かなくても、「日勤のみ」「1日6時間からの短時間勤務可」「重量物の取り扱いなし」「更衣室・休憩室完備」のように、働く条件を具体的に書けば、女性を含む幅広い人に届きます
女性が働ける工場にするための見直し
求人票に書ける条件を増やすには、職場そのものを見直す必要があります。大がかりな投資をしなくても、できることから始められます。
作業を分けて「力のいらない工程」を見える化する
持ち場ごとの作業を書き出し、重量物の取り扱いがある工程とない工程を分けます。女性労働基準規則では、満18歳以上の女性について、断続作業で30kg以上、継続作業で20kg以上の重量物を扱う業務に就かせることを禁止しています。重い部品の運搬は台車や簡易リフトに置き換える、1回に運ぶ量を減らすといった工夫は、女性だけでなく高齢の社員や腰痛を抱える社員の負担軽減にもなります。
更衣室・トイレ・休憩室を整える
女性用の更衣室とトイレは、女性採用の前提です。空き部屋を更衣室に転用する、仮設のユニットを置くなど、まずは最低限の環境を整えます。作業服や安全靴、保護具は小さいサイズも用意しておきます。職場見学の際に設備をきちんと見せられることが、辞退を減らす第一歩です。
働き方の選択肢を増やす
| 見直しの例 | 内容 | 求人での伝え方 |
|---|---|---|
| 日勤のみの枠 | 交替勤務の工程とは別に、日勤だけで完結する持ち場を作る | 「日勤のみ・夜勤なし」 |
| 短時間勤務 | 午前・午後で区切れる作業を切り出し、1日5〜6時間の勤務を可能にする | 「1日6時間から相談可」 |
| 急な休みへの備え | 1つの作業を2人以上ができるようにし、休みが出ても回る体制にする | 「子どもの急な発熱などにも対応」 |
| 残業の見える化 | 月ごとの残業時間の実績を把握し、繁忙期とそうでない時期を示す | 「残業は月平均◯時間、繁忙期は◯月」 |
特に「1つの作業を2人以上ができる」体制は、多能工化として生産面でも効果があります。女性採用のための特別扱いではなく、誰もが休みやすい職場づくりとして進めると、既存の社員の理解も得やすくなります。
女性の相談先を作る
女性が少ない職場では、困りごとを相談できる相手がいないことが離職につながります。女性の先輩がいれば相談役をお願いし、いない場合は総務担当などを窓口に決めます。ハラスメントの相談窓口は事業主の義務でもあり、相談先が明確な職場は女性にとって安心材料になります。
改正女性活躍推進法への対応
2026年4月1日に施行された改正女性活躍推進法により、常時雇用する労働者が101人以上の企業は、「男女間賃金差異」と「女性管理職比率」の公表が必須になりました。これまで男女間賃金差異の公表義務は301人以上の企業に限られていたため、101〜300人規模の中堅工場にとっては新しい対応です。
公表される数字は、求職者が会社を比べる材料にもなります。製造業は女性管理職比率が低い産業のため、数字だけを見ると見劣りしがちです。数字とあわせて、女性の採用や登用に向けた取り組み、設備や働き方の見直しの状況を自社の採用ページで具体的に発信すると、取り組む姿勢が伝わります。100人以下の企業は公表の義務はありませんが、自社の女性比率や管理職の状況を把握しておくことは、採用の打ち手を考える土台になります。
採用活動の進め方
職場の見直しと並行して、女性の候補者との接点を増やします。
- 働く女性の姿を見せる:社内に女性社員がいれば、仕事内容や1日の流れを求人票や採用ページで紹介します。写真や短いインタビューがあるだけで、応募の心理的なハードルが下がります
- 職場見学で設備まで見せる:作業現場だけでなく、更衣室や休憩室も案内します。応募者が不安に思う点を先に見せることで、辞退を防ぎます
- 経路を広げる:ハローワークに加え、地域の求人サイト、マザーズハローワーク、職業訓練校など、働き方の柔軟さを求める人が集まる経路にも求人を出します
- 面接で働き方の希望を聞く:勤務時間や家庭の事情について、本人が話せる範囲で希望を聞き、会社として対応できることを伝えます。ただし、結婚や出産の予定など、採用の判断に関係のない質問はしないよう面接官にも周知します
まとめ
製造業は女性管理職の割合が低く、男性のみを採用した企業の7割は「女性の応募がなかった」と答えています。工場で女性の応募が来ない背景には、力仕事のイメージ、設備の不足、働き方の選択肢の少なさ、入社後の姿が見えないことがあります。
求人票では性別を限定・優先する表示を避け、日勤のみや短時間勤務、重量物の有無など働く条件を具体的に書きます。その条件を増やすために、作業の分け方、更衣室や休憩室、働き方の選択肢を見直すことが、女性だけでなく誰もが働きやすい工場につながります。求人の見直しから採用活動の実行までを任せたい場合は、RPaaSのような採用代行を検討するのも一つの方法です。
よくある質問
工場の求人票に「女性歓迎」と書いてもよいですか?
男女雇用機会均等法により、募集・採用で一方の性別を限定・優先する表示は原則として認められず、「女性歓迎」もこれに当たります。女性が相当程度少ない職種ではポジティブ・アクションとして認められる場合がありますが、迷ったら都道府県労働局に確認しましょう。日勤のみや短時間勤務など、条件で伝えるのが確実です。
工場で女性の応募が来ないのはなぜですか?
力仕事・きつい仕事というイメージが強いこと、女性用の更衣室やトイレなど設備が整っていないこと、交替勤務のみなど働き方の選択肢が少ないこと、女性の先輩や管理職がいないため入社後の姿が見えないことが主な理由です。求人票で仕事内容や条件を具体的に伝えることと、職場の見直しを並行して進めることが大切です。
女性社員に重い物を持たせてはいけない決まりはありますか?
女性労働基準規則により、満18歳以上の女性には、断続作業で30kg以上、継続作業で20kg以上の重量物を扱う業務に就かせることが禁止されています。重い部品の運搬は台車や簡易リフトに置き換えるなど、作業の工夫で負担を減らすと、女性だけでなく高齢の社員や腰痛を抱える社員にとっても働きやすくなります。
改正女性活躍推進法で中小企業は何をする必要がありますか?
2026年4月1日の施行により、常時雇用する労働者が101人以上の企業は、男女間賃金差異と女性管理職比率の公表が必須になりました。100人以下の企業は公表義務はありませんが、自社の女性比率や管理職の状況を把握し、取り組みを採用ページで発信しておくと、求職者に職場の姿勢が伝わります。
女性が働きやすい工場にするには何から始めればよいですか?
まず持ち場ごとの作業を書き出し、重量物を扱わない工程や日勤だけで完結する工程を見える化します。次に女性用の更衣室やトイレ、小さいサイズの作業服を用意し、短時間勤務や急な休みに対応できる体制を作ります。大きな投資をしなくても、できることから順に進められます。