2026.09.25

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採用担当が兼任でも回る採用業務の進め方|中小製造業向け

採用担当が兼任でも回る採用業務の進め方|中小製造業向け

目次

中小の製造業では、採用の担当が総務や経理、あるいは工場長の「兼任」になっている会社が少なくありません。日中は現場や本業に追われ、応募者への返信は夜か週末。気づけば連絡が数日空いて、面接の前に辞退されていた。こうした話は、採用の現場で本当によく聞きます。

この記事では、採用担当が兼任でも採用業務が止まらないようにするための進め方を、業務の棚卸し、時間の使い方、テンプレート化、ツールと生成AIの活用、経営者と現場の巻き込み、外部への切り出しの順に解説します。専任の担当者を置けない会社でも、今週から着手できる内容に絞りました。

採用担当が兼任の中小製造業で起きていること

まず、兼任の採用担当が置かれている状況を、公的な統計と調査で確認しておきます。

人手は足りないのに、採用に割く人手もない

厚生労働省の労働経済動向調査(2026年5月)によると、製造業の事業所のうち正社員等が「不足」と答えた割合は47%で、「過剰」は3%にとどまります。不足から過剰を引いた過不足判断D.I.は+44ポイントと、高い不足感が続いています。

採用の難しさは中小企業ほど強く出ます。リクルートワークス研究所の中途採用実態調査(2025年度下半期)では、中途採用で必要な人数を「確保できなかった」企業が全体で51.5%、従業員5〜299人の企業では51.9%でした。業種別では機械器具製造業が56.3%と、確保できなかった割合が高い業種のひとつです。

2025年版中小企業白書でも、中小企業で特に不足しているのは製造作業者などの「現業職」であり、採用担当者の人件費や求人広告費といった採用コストが5年前より「増加した」と答えた事業者が約7割に上ると報告されています。人が足りないから採用したいのに、採用に使える人と時間がいちばん足りない。これが兼任の採用担当が直面している構図です。

兼任の採用担当がつまずく3つの場面

  • 応募対応が遅れる。本業の合間に応募を確認するため、返信が翌日以降になり、他社に先を越される
  • やり方が担当者の頭の中にしかない。求人票の書き方、面接での質問、辞退への対応が個人の経験に依存し、担当が異動・退職すると採用が止まる
  • 何が効いているか分からない。媒体ごとの応募数や面接への進み方を記録していないため、来年も同じ媒体に同じ費用を払うことになる

以下では、この3つを順に解消していきます。

まず採用業務を棚卸しする

忙しい人ほど「採用は片手間でできる」と思いがちですが、書き出してみると業務の種類は意外に多く、毎日発生するものと年に数回のものが混ざっています。最初に、自社で発生している採用業務を一覧にします。

業務発生する頻度1回あたりの目安向いている担当
求人票の作成・更新職種ごとに年数回2〜3時間兼任担当+現場責任者
求人媒体・ハローワークの管理週1回程度30分〜1時間兼任担当
応募者への一次返信応募のたび10分兼任担当(型を決める)
面接の日程調整応募者ごとに2〜3往復合計30分程度ツールで代替可
面接の実施・評価応募者ごと1時間経営者・現場責任者
内定連絡・条件提示・入社手続き採用のたび2〜3時間兼任担当
応募数・採用数の記録と振り返り月1回30分兼任担当+経営者

この表を埋めるだけで、「毎日発生するのは応募への返信と日程調整だけ」「面接は自分がやらなくてもよい」といったことが見えてきます。時間の目安は自社の実績で置き換えてください。

「すぐ返す仕事」と「まとめてやる仕事」に分ける

棚卸しができたら、業務を2種類に分けます。分ける基準は「相手が待っているかどうか」です。

応募者が待っている仕事は、その日のうちに

応募への一次返信と面接日程の提示は、応募者が待っている仕事です。転職活動中の人は同時に複数社へ応募しているため、返信が遅い会社は比較の土俵から外れていきます。目安として、応募を受けたら1営業日以内に「受け付けました」という連絡と面接候補日を返すルールを決めましょう。内容は次の項で述べるテンプレートで固定し、担当者は日付と名前を入れるだけにします。

兼任担当が現場に出ていて対応できない時間帯があるなら、応募通知を経営者や事務担当にも届くようにして、最初の返信だけは誰でも打てる状態にしておくと止まりません。

相手が待っていない仕事は、週1回の固定枠で

求人票の見直し、媒体の管理、応募数の記録、面接後の社内共有は、まとめて処理して問題ありません。おすすめは、毎週同じ曜日・同じ時間に「採用の時間」を60分だけ確保することです。カレンダーに入れて、その時間は現場からの相談も原則受けないと決めます。兼任の採用が回らない最大の理由は、採用の時間が「空いたときにやる」扱いになっていることです。固定枠を作ると、採用業務は突発の仕事から定例の仕事に変わります。

月に1回は、その固定枠を使って応募数・面接数・採用数を媒体別に記録し、経営者と共有します。数字が1年分たまると、翌年はどの媒体に費用をかけるべきかを根拠を持って決められます。

テンプレート化で「担当者の頭の中」を外に出す

属人化を防ぐ最も確実な方法は、判断や文章を型にして残すことです。最低限そろえたいのは次の4つです。

1. 応募者への返信文

受付連絡、面接日程の提示、面接後のお礼、不採用の連絡、内定の連絡の5種類を用意します。件名も含めて固定し、変えるのは名前と日付だけにします。丁寧すぎる長文より、いつ・どこで・何を持ってくるかが一読で分かる短い文の方が、応募者にとっても親切です。

2. 求人票の雛形

製造業の求人票で応募者が知りたいのは、一日の仕事の流れ、勤務体系と夜勤・交代勤務の有無、残業の実態、作業環境、教育体制です。厚生労働省の雇用動向調査(2024年)では、女性の転職入職者が前職を辞めた理由として、個人的理由を除くと「労働時間、休日等の労働条件が悪かった」が最も多く挙がっています。労働条件をぼかした求人票は、応募が減るだけでなく入社後の早期離職にもつながります。項目を固定した雛形を作り、職種が増えても同じ形で書けるようにしておきます。

3. 面接評価シート

質問項目と評価の観点を1枚にまとめ、面接官が誰でも同じ基準で評価できるようにします。製造業なら、安全に対する意識、手順を守る姿勢、体力面の確認、これまでの作業経験、通勤や勤務体系の条件を確認する欄を設けます。評価は「採用・保留・見送り」の3段階と、その理由を一言書く欄で十分です。

4. 候補者管理表

応募日、媒体、氏名、選考の段階、次のアクションと期限、担当者を1行で管理する表を作ります。高価なシステムは不要で、表計算ソフトの共有ファイルで始められます。担当が不在でも、経営者がこの表を見れば「誰に何をいつまでに返すか」が分かる状態が目標です。

ツールと生成AIで手を動かす時間を減らす

型ができたら、繰り返し作業をツールに任せます。日本商工会議所の2026年の調査では、人手不足への対応策として「デジタル活用等による省力化」を挙げた中小企業が40.2%に上りました。採用業務はまさに省力化しやすい分野です。

  • 日程調整ツール。面接可能な枠を公開し、応募者に選んでもらう。メールの往復が1回で終わり、兼任担当が現場にいる間も調整が進む
  • 応募管理ツール(ATS)。複数媒体の応募を1か所に集め、選考の段階と次のアクションを自動で記録する。候補者管理表を手で更新する手間がなくなる
  • 生成AI。求人票の下書き、スカウト文の案、面接の質問案、応募者への返信文の初稿を作らせる。白紙から書く時間がなくなり、担当者は自社の実態に合わせて直す作業に集中できる

生成AIを使うときの注意点は2つあります。第一に、給与や勤務時間などの労働条件は必ず人が確認し、実際の条件と一致させることです。第二に、応募者の個人情報をそのまま入力しないことです。応募者データは社内の管理表に置き、AIには職種や条件などの一般的な情報だけを渡す運用にしておくと安全です。生成AIでの求人票やスカウト文の具体的な作り方は、生成AIで求人票とスカウト文を作る方法で詳しく解説しています。

経営者と現場を巻き込む

兼任の採用担当が一人で抱え込む必要はありません。むしろ、中小製造業の採用で成果に直結するのは、経営者と現場責任者の関わり方です。

2025年版中小企業白書は、人材の不足感が特に強い従業員数30名超の事業者について、経営者が自ら採用活動を担っている事業者ほど「予定人数を採用」できた割合が高いと報告しています。経営者が採用に関わることで、会社の雰囲気や熱意を応募者に直接伝えられることが理由と考えられています。

具体的には、次の3つの役割分担が現実的です。

  • 経営者は、最終面接に必ず出る。会社の方向性と、その人に期待する役割を自分の言葉で伝える。採用の月次の数字を一緒に見る
  • 現場責任者(工場長・班長)は、求人票の仕事内容の確認と一次面接に同席し、工場見学の案内役を担う。現場の言葉で仕事を語れる人がいると、応募者の不安が大きく減る
  • 兼任の採用担当は、応募対応・日程調整・記録・連絡という「流れを止めない役割」に専念する

あわせて、社員紹介(リファラル)の仕組みを作っておくと、媒体費をかけずに応募が生まれます。紹介したくなる会社かどうかは社員が一番よく知っているので、紹介の依頼は経営者から直接伝えるのが効果的です。

外部に任せる業務の切り分け方

ここまでの整理をしても時間が足りない場合、あるいは「求人票を書く」「媒体を選ぶ」といった専門性が必要な部分で手が止まる場合は、外部の力を使う判断をします。選択肢と向き不向きを整理します。

選択肢任せられること向いている会社注意点
ハローワーク無料の求人掲載、応募者の紹介地元採用が中心の会社求人票の書き方は自社で工夫が必要
求人媒体・代理店媒体選定、原稿作成の支援応募数を増やしたい会社応募対応や選考は自社で行う
人材紹介候補者の探索・推薦経験者・技術職を急いで採りたい会社成功報酬型で1人あたりの費用は高め。社内に採用の仕組みは残りにくい
採用代行(RPO)求人作成、応募対応、日程調整、選考管理など採用実務の設計と運用採用担当を置けないが、採用を継続的に行いたい会社丸投げではなく、面接や最終判断は自社が担う前提で契約範囲を決める

外部に任せるときに大切なのは、「何を残して、何を渡すか」を先に決めることです。面接での見極めと採用の最終判断、そして入社後の受け入れは、自社にしかできません。一方で、求人票の作成、応募対応、日程調整、候補者管理、媒体の運用といった実務は、仕組みとして外に出しやすい領域です。

採用業務の設計から日々の実行、改善までを継続的に任せたい場合は、RPaaS のような採用代行サービスを検討する選択肢もあります。その際も、この記事で述べた棚卸しと役割分担ができていると、依頼する範囲を明確に伝えられ、社内に仕組みが残る形で進められます。

まとめ

採用担当が兼任でも採用が回る会社と回らない会社の差は、担当者の熱意ではなく、仕組みの有無にあります。要点を振り返ります。

  • 採用業務を棚卸しし、毎日発生する仕事と年数回の仕事を分けて把握する
  • 応募者が待っている返信と日程調整は1営業日以内に、それ以外は週1回の固定枠でまとめて処理する
  • 返信文・求人票・面接評価シート・候補者管理表の4つをテンプレート化し、担当者が変わっても続く形にする
  • 日程調整ツール・応募管理ツール・生成AIで手作業を減らし、労働条件と個人情報の扱いだけは人が守る
  • 経営者は最終面接と月次の振り返りに、現場責任者は仕事内容の確認と一次面接に関わる
  • それでも足りない部分は、残す業務と渡す業務を決めたうえで外部に任せる

すべてを一度に整える必要はありません。まずは今週、応募への返信テンプレートと週1回の採用の時間を決めるところから始めてみてください。

よくある質問

採用担当が兼任の会社でも、採用はうまくいきますか?

うまくいっている会社は多くあります。差が出るのは担当者が専任か兼任かではなく、応募への返信を1営業日以内に返す仕組み、返信文や面接評価の型、週1回の採用の時間があるかどうかです。まず採用業務を棚卸しして、毎日発生する仕事とまとめてできる仕事を分けることから始めてください。

応募者への返信はどのくらいの速さで返すべきですか?

目安は1営業日以内です。転職希望者は複数社に同時に応募しているため、返信が遅い会社は比較の途中で候補から外れます。受付の連絡と面接候補日を一通で送るテンプレートを用意し、担当者が現場に出ている時間帯は経営者や事務担当も返せるようにしておくと、対応が止まりません。

採用業務のうち、最初に自動化すべきなのはどれですか?

面接の日程調整です。応募者ごとにメールを2〜3往復する作業が、日程調整ツールを使えば候補枠を選んでもらうだけで終わります。次に、複数の求人媒体からの応募を1か所に集める応募管理ツール、その後に求人票や返信文の下書きを生成AIに任せる順番が、負担に対して効果が大きい進め方です。

採用代行(RPO)に任せると、社内に採用のノウハウが残らないのではありませんか?

契約範囲の決め方次第です。面接での見極めと採用の最終判断、入社後の受け入れは自社が担い、求人票の作成や応募対応、日程調整、候補者管理といった実務を任せる形にすれば、判断の基準は社内に残ります。依頼する前に自社の採用業務を棚卸ししておくと、任せる範囲を明確に伝えられます。

経営者は面接に出るべきですか?

中小製造業では出る方が採用につながりやすいと考えられます。2025年版中小企業白書では、人材の不足感が強い従業員数30名超の事業者のうち、経営者が自ら採用活動を担っている事業者ほど予定人数を採用できた割合が高いと報告されています。会社の方向性と期待する役割を経営者自身の言葉で伝えることが、応募者の決め手になります。

出典・参考ソース

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この記事を書いた人

株式会社Sei San Sei CEO。半導体商社での技術提案、リクルートでの製造業向け採用支援・RPO推進を経て、ITベンチャー取締役・人事責任者を歴任。2023年にSei San Seiを設立し、大手製造メーカーをはじめ累計30社以上の採用・業務改善支援を手掛ける。「現場の技術理解」と「採用・組織作り」の双方に強いノウハウを持つ。著書に『仕事や将来に迷った時に、若手キャリア層のこれからの描き方』がある。

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